カレーがなかった時代、インドの料理が日本の国民食になるまで
公開日:2026-11-02
今や日本人が週に一度は食べるとも言われるカレーライス。その起源をたどると、インド→イギリス→日本海軍という意外な経路が見えてくる。
日本人がカレーを食べる頻度は、週に一度とも言われる。
給食のカレー、家庭のルーカレー、カレーチェーンの牛丼並みの価格帯。カレーは日本の食卓に完全に溶け込んでいるが、その起源はインドであり、日本に伝わったのは明治時代のことだ。
今、当たり前にあるもの
日本のカレーはインドのカレーとは大きく異なる独自の料理として定着している。小麦粉でとろみをつけたカレールー、じゃがいも・にんじん・玉ねぎが入ったカレーライス、福神漬けを添えるスタイルは日本独自だ。
レトルトカレーの市場規模は年間数百億円を超え、インスタントのカレールーはどの家庭にも常備されている。
それがなかった時代
インドのカレーは何千年もの歴史を持つが、日本人がカレーを知るのは明治以降のことだ。
カレーはインドからイギリスに渡り、イギリス料理として変形された。イギリス統治下のインドで本国に持ち帰られた「カレー」は、スパイスを混合した粉末(カレー粉)として規格化され、小麦粉でとろみをつけた西洋風のシチューのような料理になった。
明治時代の日本に入ってきたのは、このイギリス経由のカレーだ。文明開化の洋食として、ライスカレーは西洋風先進料理として紹介された。1872年(明治5年)頃に出版された料理書に「カレー」の記述が見られる。
どう変わってきたか
カレーを日本全土に広めた最大の功績は、日本海軍にあると言われる。
明治時代の海軍は栄養バランスのよい食事として採用し、船上での集団食としてカレーライスを定着させた。海軍出身の兵士たちが全国各地に帰郷することで、カレーが地方にも広まっていった。
戦後、1950年代の経済復興期に国産のカレー粉・カレールーが大量生産されると、家庭で手軽に作れる料理として普及した。1964年(昭和39年)のエスビー食品・ハウス食品などによる固形ルーの発売が、現代の家庭カレーの形を決定づけた。
学校給食にカレーが採用されたことも普及に大きく貢献した。1970〜80年代に給食の主力メニューとなり、子どもたちがカレーを「普通の食べ物」として育つ環境が生まれた。
変化し続ける国民食
インドのスパイスカレーが、イギリスで変形し、日本海軍で調理され、給食で育てられ、レトルトで保存食になった。
カレーは今も変化している。スパイスカレーブームで本格的なインド式が見直され、地域ごとの「ご当地カレー」が各地に生まれた。北海道のスープカレー、金沢のカレー文化、横須賀海軍カレーなど、「カレー」というひとつの言葉の中に、複数の歴史と地域性が混在している。