スーパーマーケットがなかった時代、食材はどこで手に入れていたのか
公開日:2026-10-08
一箇所で野菜も肉も魚も日用品も揃う。そのセルフサービスの買い物が当たり前になったのは、案外最近のことだ。
今日の夕食の食材を買いに、スーパーへ行く。
野菜、肉、豆腐、調味料、まとめて一箇所で選んでかごに入れ、レジで精算して終わり。これほど自然な行為も、20世紀の中頃に生まれた形だ。それ以前の買い物は、もっと違う姿をしていた。
今、当たり前にあるもの
現代のスーパーマーケットでは、農産物・水産物・精肉・惣菜・冷凍食品・加工食品・日用品が一店舗で揃う。価格は明示されており、客は自分でカゴに商品を入れ、まとめてレジで支払う。セルフサービス方式だ。
冷蔵・冷凍設備が充実し、生鮮食品の鮮度が保たれる。消費期限の表示義務により、食品の安全管理も規格化されている。週1〜2回のまとめ買いが成立するのは、スーパーと家の冷蔵庫という組み合わせがあってこそだ。
それがなかった時代
スーパーマーケット以前の食材調達は、業種ごとに別々の店を回るものだった。野菜は八百屋、魚は魚屋、肉は肉屋、豆腐は豆腐屋。これらが商店街や市場に並び、客は目的ごとに店をはしごする。
各店の主人は商品に詳しく、「今日はサバが良いよ」「この大根はみずみずしい」という対話が買い物の一部だった。信頼関係に基づく「顔なじみ」との取引が基本で、ツケ(後払い)の文化もあった。
冷蔵設備がなかった時代は、食材は「その日のうちに使い切るもの」だったため、毎日のように買い出しに出かけるのが普通だった。市場の開く時間に間に合うよう、朝早くから動くのが主婦の日課だった。
どう変わってきたか
セルフサービス式のスーパーマーケットは、1916年にアメリカのメンフィスでピグリー・ウィグリーが開業したのが原型とされる。それまでの食料品店では客が注文し、店員が棚から取り出して渡すカウンター越しの形式が主流だった。
日本にスーパーが登場したのは1950年代で、1956年に東京・青山に開業した「紀ノ国屋」、同じ頃の「西友」「イトーヨーカドー」の原型となる店舗などが草創期にあたる。高度経済成長期の1960〜70年代に急速に普及し、商店街の専門店は競合に苦しむようになった。
1990年代にはコンビニエンスストアの24時間営業が定着し、深夜の食材需要にも対応できるようになった。
利便性と失われたもの
スーパーの普及で、食材調達の効率は劇的に上がった。しかし「今日はどんな魚が入っているか」という対話や、地域の食文化を伝える専門店の知識は、画一化の中で薄れていった面もある。
生産者の顔が見える産直コーナーや、市場の立ち売りに人が集まるのは、効率だけでは満たされない何かを求めているからかもしれない。