選挙がなかった時代、政治の決定に関われるのは一握りだった
公開日:2026-10-10
投票所へ行き、一票を入れる。その当たり前の権利は、長い時間をかけて、少しずつ広げられてきたものだ。
投票所へ行き、封筒に名前を書き、箱に入れる。
選挙のたびに繰り返されるその行為が、あまりに慣れ親しんだものになったため、その重みが見えにくくなっている。しかしこの「誰でも一票を持つ」という当たり前は、ほんの100年ほど前には存在しなかった。
今、当たり前にあるもの
日本では18歳以上のすべての日本国民が選挙権を持つ。衆議院・参議院・地方議会・首長選挙など、政治の決定に参加する機会が制度として保証されている。秘密投票が保障され、投票内容が外部に漏れることはない。
2016年からは選挙年齢が20歳から18歳に引き下げられ、より多くの若者が政治参加できるようになった。
それがなかった時代
日本で最初の国政選挙が行われたのは1890年(明治23年)のことだ。しかしこのとき選挙権を持っていたのは、直接国税15円以上を納める25歳以上の男性のみだった。全人口のおよそ1.1%しか投票できなかった計算になる。
つまり、明治初期の日本では、国民の99%近くは政治の決定に直接関わる手段を持っていなかった。
女性が選挙権を得るまでの道のりはさらに長かった。婦人参政権運動は大正期から活発化したが、戦前の日本では実現せず、戦後の1945年(昭和20年)に改正選挙法で女性参政権が認められた。翌1946年4月の選挙が、日本で女性が初めて投票した選挙だ。
どう変わってきたか
1925年(大正14年)に「普通選挙法」が成立し、25歳以上の男性全員に選挙権が与えられた。これが「男子普通選挙」の実現だ。しかし同年、治安維持法も成立しており、政治参加の拡大と思想弾圧が並行して起きた時代でもある。
第二次世界大戦後の1945年、連合国軍の占領下で民主化が進む中、20歳以上の男女に選挙権が与えられた。1947年の日本国憲法施行とともに「主権在民」が明記され、普通選挙は憲法上の保障となった。
その後、2015年の公職選挙法改正で選挙年齢が18歳に引き下げられた。100年余りの間に、選挙権は1.1%の人々のものから、すべての成人のものへと変わった。
一票の重さ
選挙の投票率が低下し続けている。特に若年層の投票率の低さが課題として指摘されている。
「どうせ変わらない」という無力感から投票に行かない人もいれば、選挙への信頼が薄れている場合もある。一方、選挙権を勝ち取るために声を上げ、法律を変えるために運動した人々がいたことも確かだ。
一票を入れることの意味は、制度として存在するだけでは完結しない。その一票が持つ重みは、それが当たり前でなかった時代を知ることで、少し違って見えるかもしれない。