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年賀状がなかった時代、新年の挨拶はどうやって伝えていたのか

公開日:2026-09-09

年賀状がなかった時代、新年の挨拶はどうやって伝えていたのか

元旦に届く年賀状は日本の正月の風物詩だ。しかし郵便制度が整う前、新年の挨拶はどのように伝えられていたのか。

元旦の朝、ポストを開けると束になった年賀状が届いている。

この光景は日本の正月に深く根付いているが、郵便制度が整う以前、人々は新年の挨拶をどのように伝えていたのか。

今、当たり前にあるもの

現代の年賀状は郵便制度によって支えられており、12月中に投函すれば元旦に届く。日本郵便は年間約15億枚(ピーク時は40億枚超)の年賀はがきを取り扱う。

近年はデジタル年賀状・SNSのメッセージ・LINEで新年の挨拶を送る人も増えており、紙の年賀状の発行枚数は減少傾向にある。

それがなかった時代

郵便制度が整う以前の江戸時代、新年の挨拶は「年始回り(ねんしまわり)」という形で行われていた。元旦から数日間、お世話になった人の家を直接訪ねて挨拶する習慣で、武家・商家問わず広く行われていた。

主人と使用人が一緒に挨拶回りをすることも多く、大名ともなれば年始回りの行列が何百人にも及ぶこともあった。訪問先では酒や料理でもてなされ、挨拶が社交の場として機能した。

遠方の人への挨拶は「飛脚(ひきゃく)」を使って手紙を送ることもあったが、費用が高く、届くまでに日数がかかった。近くの人を直接訪ねることが、最も確実な新年挨拶の方法だった。

どう変わってきたか

日本の近代郵便制度は1871年(明治4年)に発足した。「郵便はがき」が発行されたのは1873年で、これにより簡単な挨拶状を低コストで送れるようになった。

年賀はがきの習慣が定着したのは明治中期から後期にかけてのことで、郵便の普及とともに「年始回り」から「年賀状」へと挨拶の形が移行した。

戦後1949年に「お年玉付き年賀はがき」が登場し、抽選番号が付いた年賀状が爆発的に普及した。高度経済成長期には企業・個人ともに年賀状の送付が急増し、正月の郵便配達は「特別態勢」が必要なほどになった。

挨拶が運ぶもの

年始回りの時代、挨拶とは単なる「おめでとう」の一言ではなかった。

相手の顔を見て、声を聞いて、一緒に食事や酒を楽しむなかで関係が確認され、更新された。挨拶は一年の関係を結び直す儀式だった。

年賀状がその役割を担い、メールやSNSへと移行するにつれて、挨拶の形は軽くなった。しかし「新年に誰かを思う」という行為の本質は変わっていないのかもしれない。

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